2013年2月19日火曜日

私と「蜘蛛の糸」


3月17日の朗読と音楽のコンサート「声と音の世界」のプログラムでは、
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を予定しています。

この作品との出会いは、もう20年以上前になります。
学生の朗読コンクールにエントリーするために題材をさがしていました。
それも、テープ審査の締め切りまであと2日、という、かなり切羽詰まった時でした。
もっと早く取りかかればよかったのですが、力を注いでいたテニスの引退試合もあり、とにかく余裕がなかったのです。
たまたま芥川龍之介の短編小説集を手にとり、ページをめくったところが「蜘蛛の糸」でした。





















ストーリーは頭に入っていましたが、声に出して読んだ事はありませんでした。
それなのに・・・
一度読んだだけで、見なくても文章がスラスラでてくるではありませんか! 
びっくりしました。
引き寄せられるように全文読み通し、最後の文章を読み終えたときには、「蜘蛛の糸でエントリーする!」と決めていました。

そうして、関東大会で受賞。

嬉しかったですよ〜。
その前のコンクールでは2秒オーバーで失格になっていましたから(あまりにマイクの感度が良く、会場に響くの気持ちよくて、いつもより長くなってしまいました)。

嬉しかったのですが・・・どんどん怖さも感じていました。
というのは、朗読するたびに、文章から教えられることが多く、つまり毎回、自分の朗読の至らなさを感じていたからです。

作家の意図するように読めていない。
だから、作家が「いいよ」と言ってくれるまで、読めない・・・。
そうして、20年以上たってしまったわけです。

では、最近になって作家が「いいよ」と言ってくれたのかというと・・・
そうではありません。
ただ、今の私にとっての「蜘蛛の糸」は、これしかないのです。
そこだけは自信を持てたので、世に送り出したいと思いました。

ファゴットと朗読がつくる「蜘蛛の糸」の世界を、どうぞお楽しみに・・・